溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~


 自然にまぶたが開いて、まどろみの向こうが明るいと気づいた。
 私はゆっくり瞬きをしながら、呼吸を繰り返す。


 ……朝になったんだ。
 ワインを飲んでいたから、酔って眠ってしまったようだけど、思いのほか頭はすっきりとしている。
 時系列で昨日のことを思い出していたら、鼻を掠めた香りにハッとすると同時に、恐る恐る布団をめくった。



 ――記憶がない。初めてだったのに、なにひとつ。

 視線の先にあったのは、自慢できるところがひとつもない自分の姿。
 一糸まとわぬ生身の自分を確認して、八神さんと結ばれてしまったのだと知った。


 そして、背中に感じる温もりの正体を確かめようと、ゆっくり身体をシーツに滑らせて反転させる。


 予想はしていたけれど、想像をはるかに超えて麗しい寝姿の彼がいた。
 起こさぬようにと気を付けても、目が奪われる。

 爽やかで綺麗で、隙があって……。


「っ!!」

 ふと視線を下ろしたら、彼も裸で横たわっていると気づき、一瞬にして頬が熱くなった。


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