溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
始業時間になって、それぞれが自席で仕事をする。
担当ごとに席が割り振られていて、奈緒美とは少し離れた席が私の定位置だ。
総務の仕事はなんでもやるイメージが持たれやすいけれど、その通り。
文書や印章、固定資産と備品などの管理から、株主総会と取締役会業務、IRの実施に福利厚生業務など、会社の運営に不可欠かつ、担当部署のない業務を一手に引き受けている。
だから、地味に思われがちだけど、意外とやりがいはあって。
なによりも、営業部などと比べて女性社員が多いのは、男性に不慣れな私にとって最高の職場環境だ。
「――はい、総務部 三藤です」
内線が鳴って応答すると、企画部の女性社員だった。
《新作のオフィス家具と文具、何時なら納入できますか?》
「午後でしたら、何時でも大丈夫です。総務部の受付で三藤宛てにご連絡ください」
新作の使い心地などをテストするのも、総務部の役割。
文具マニアの私にとって、今日は待ちわびていた日でもある。