溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

 始業時間になって、それぞれが自席で仕事をする。
 担当ごとに席が割り振られていて、奈緒美とは少し離れた席が私の定位置だ。

 総務の仕事はなんでもやるイメージが持たれやすいけれど、その通り。
 文書や印章、固定資産と備品などの管理から、株主総会と取締役会業務、IRの実施に福利厚生業務など、会社の運営に不可欠かつ、担当部署のない業務を一手に引き受けている。

 だから、地味に思われがちだけど、意外とやりがいはあって。
 なによりも、営業部などと比べて女性社員が多いのは、男性に不慣れな私にとって最高の職場環境だ。


「――はい、総務部 三藤です」

 内線が鳴って応答すると、企画部の女性社員だった。


《新作のオフィス家具と文具、何時なら納入できますか?》
「午後でしたら、何時でも大丈夫です。総務部の受付で三藤宛てにご連絡ください」


 新作の使い心地などをテストするのも、総務部の役割。
 文具マニアの私にとって、今日は待ちわびていた日でもある。


< 52 / 210 >

この作品をシェア

pagetop