溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

「今日はね、咲にだけは誰よりも早く報告しておきたいことがあって」
「えっ、なになに?」

 穏やかな笑みを浮かべた彼女は、片手をお腹に当てている。


「彼と結婚することになったんだ。……赤ちゃんもいるの」
「ええっ!? あ、赤ちゃん?」
「先週、花火大会で話そうと思ってたんだけど、咲は八神さんに連れて行かれちゃったから……。部長にだけは報告してあるけど、他の人にはまだ話してないの」

 奈緒美は社内恋愛をしていて、営業一部のエースと公認の仲。華やかな雰囲気のふたりはとてもお似合いで、いつか結婚するだろうなって思ってはいたけれど。


「わかった。公になるまでは、私も誰にも言わないでおくね。おめでとう」

 ありがとう、と返事をしてくれた彼女はとても幸せそうだ。


 素敵な人と巡り合って、いい恋をして、愛し合って子供ができて。

 私にはないものばかりだ。
 ねだったところで、なにも変わらないって分かっていても、羨ましいと思う気持ちには逆らえなかった。


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