溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
ほぼ定時で上がって、奈緒美とロッカールームに寄り、社を出た。
デスクを離れた時だけ手にする携帯には、本日も音沙汰なし。八神さんは本当に最低な人だ。
駅近くのカフェに入り、柑橘系のアイスティーを頼んで、彼女とソファ席に落ち着いた。
「ごめんね、急に誘って」
「ううん、大丈夫だよ」
ドリンクをひと口飲んで、揃ってホッと息をつく。
総務の仕事は何気に忙しいものだ。細かくて面倒なことも多いし、慣れればなんてことない作業も量があると疲れる。
「新製品、どうなの?」
「なかなかいい感じだと思うよ。企画部にフィードバック返すのは明日の午後だから、もうちょっと使ってみるつもり」
私の文具好きも知っている彼女は、バッグから携帯と手鏡を出してテーブルに置いた。
一緒にいることが多いけど、女子力や大人っぽさは雲泥の差だと思う。
グラマラスでいつもいい匂いがする奈緒美は、総務にいながらも社内で人気がある。隣にいる地味系の私には、誰も目をくれない。
だけど、僻んだりすることはなかった。
男性に不慣れな私は、奈緒美といた方がなにかと楽だったから。