溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

 悔しいけど、写真に目を奪われてしまう。
 そして、花火大会の夜に知った、彼の眼差しや温もりを思い出し、とても切なくなった。


 彼は、お見合い相手が私と知ったら、驚愕するかもしれない。

 今からでも断れるかな……。
 いくらなんでも、相手が悪すぎる。
 それに、仕事のうちと割り切ったって、穏やかに当日を過ごせる保証はない。

 再会したら、豪雨の夕方と同じくらい憤慨して、冷たい瞳で私を見るはずだ。その表情に、耐えられるとも思えない。


 相手が私と知って、八神さんから断ってくれたら済む。
 そして、他の女性社員か他社の綺麗な女性に、この縁談が回って……彼と結ばれて。

 円満に事を済ませるなら、それがいいと思う。

 だけど、他の誰かのものになると知るのはつらくて。


 ――もう、片想いもできないのに。


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