溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
十一月の冷たい風がオフィスビルの間を吹き抜け、とぼとぼと駅までの道を歩く私の横を通り過ぎた。ビューっと音を立てた追い風で、耳にかけていたサイドの髪が乱れる。
いよいよ明日だ。
社に断りを入れるとしても、なんて言えばいいのか考えているうちに、お見合い当日が迫っていた。
総務部長も人事部長も、先方から断りがあったと言ってこない。八神さんにも私の情報が伝わった上で、明日を迎えることに異論がないということだ。
どんな顔をして会えばいい?
彼と何を話して過ごしたらいいの?
もう逃げられない――。
再び吹きつけた風で、髪が乱れる。
視界を覆った髪を直して視線を上げたら、路肩に停まっている車に目が留まった。