溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「ふふっ」
突然、八神さんが顔を背け、口元に軽く握った手をかざして小さく笑った。
「えっ、な、なんですか?」
「いや……あなたは本当にわかりやすい人だなぁと」
「どういう意味ですか」
やっぱり失礼な人だ。人の顔を見て笑うなんて……。
「ホッとした顔してるなぁって。これで見るのは二回目か」
到着したエレベーターに乗ると、一脚の椅子が置かれている。
「少しの間ですが、どうぞ座ってください。足、疲れているんでしょう?」
「どうしてそれを……」
「見ていれば分かります。普段、洋靴しか履いていない人は、草履で長時間過ごすのは大変ですから」
そっと手を取り、私を椅子に座らせてくれた彼の優しさに胸を打たれる。