溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「大丈夫ですか?」
「ありがとうございます」
私の足元を気にかけ、歩調まで合わせてくれる優しさに、またしてもきゅんと胸が鳴る。
そして、彼の隣を歩くだけで、周囲の人々の視線が集まるのを身を以て知った。
「とりあえず、祖父たちの目が届かない場所に行きますから」
「また、先ほどの席に戻るんじゃないんですか?」
エレベーターを待つ間、彼は一歩後ろに立つ私を見つめてくる。
彼は、持って生まれた華やかさがあって、生まれ育った環境も良い。躾だってきちんと行き届いているのが所作で伝わる。
だけど、私にとっては信用ならない相手で……見つめてくる瞳の奥に本当の彼を探してしまった。
「あなたのおかげで御社も助かっただろうし、もう見合いは終わりです。うちの父たちも食事をしながら商談を進めたのち、御社の会長や専務を伴って銀座に繰り出すはずです」
こんなにあっという間に終わってしまっていいのかな……。
気を張っていたわりにあっけなく時間が過ぎ、緊張が解けていく。