生贄姫は隣国の死神王子と送る平穏な毎日を所望する
「俺、コレがバレたらルイスに社会的に抹殺されるな」

「なんでそこでルゥが出てくるのかは分かりかねますが、バレなきゃいいんじゃないですか?」

 共犯ですねーと何故か嬉しそうにそう笑うリーリエに、テオドールは小さく笑った。

「リィ、何か俺にして欲しいこと、とか、まぁ欲しい物でもいいけど、なんかないか?」

「……欲しい、もの?」

「詫びというか、礼というか」

 気にしなくてもいいと言いかけて、欲しいものを思い出し口にしてもいいのかリーリエは真剣に熟考する。

「……なんでも?」

「俺にできる範囲なら善処する」

 テオドールは魔力をガッツリ抜かれたり、コスプレ勧められたりといったリーリエの要求を思い出しながら、何を言われてもまぁ頑張ろうと腹を括った。

「……デート、したいです。1週間後、1日だけ私に時間をくださいませんか?」

 だが、リーリエの口から躊躇いがちに出てきた要求は、テオドールの予想していないもので、テオドールはリーリエの方を見る。

「お誕生日、本当は盛大に祝いたいのですけれど、テオ様はお嫌でしょう? なので、2人でお忍びで街にお出かけしたいです」

 誕生日と言われて、そんな時期だったかと思い出す。テオドール自身が避けていたので、特に祝われた事もないし、その日はいつもただ過ぎていくだけの日で、今年もそうなる予定だった。

「お祝いとか、プレゼントとか、用意しません。特別な日にする必要もないです。ただ、その日一日私が一緒に居たいだけなのです」

 ダメでしょうか? と言うリーリエにテオドールはしばらく考える。

「ダメではないが、どうやっても俺の容姿だと目立つぞ」

 街中、しかも日中では黒髪も青と金の不揃いな目も隠しようがなく、その上リーリエを連れてとなれば、気づかれないようにというのはかなり難しいことのように感じる。

「そこは、まぁ私が何とかできるので」

 提案が受け入れられて、リーリエはぱぁぁっと嬉しそうに笑う。

「それは、詫びになるのか?」

「もちろん! わぁぁ、どうしましょう。推しとやってみたかったシチュエーション第1位! ですよ!!」

「デートが第1位なのか。そうなると残りの4位から2位が気になるな」

 そういえば宅飲みが5位だったなと思い出し、テオドールが尋ねるが、リーリエは笑って答えず、

「デート、楽しみですね」

 約束ですよ、と翡翠色の瞳を輝かせてそう言った。
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