例えば、XXとか。
碧斗が言ったと同時に、床にあった物を踏みバランスを崩す私を支える碧斗。
足元を見れば私の部屋にあるべき保湿クリームだった。
「 な、言った通りだろ 」
「 そうだけど! も、離していいよ 」
あー、近いどころじゃないし。
今 ギュッてされたら、困るー……
「 離すと思う?お前に断る権利ないってわかんねぇの? 」
「 権利って、頭大丈夫?」
ほんと自分勝手!
「 あ、ちょっと…… 」
「 離したくないから離さない、俺のだろ、だから俺の好きにする。
髪も、耳も、首も…… この唇も、お前全部が俺のだ 」
ダメなのに、抱きしめられたら離れられないから、ダメなのに……
碧斗が意地悪に甘い言葉を言うから。
キスで塞がれる抵抗は意味をなさない。
「 碧…斗…… 」
「 ほら、な… キス一つでその顔、俺の女って証拠だろ、もう黙ってキスされてろ 」
碧斗……
また重なる二人の唇に、邪魔が入る予定はないのに、邪魔をしに来るかのようにやってくる。
インターホンが鳴らされ、眉間にしわ寄せる碧斗が舌打ちしながらモニターを見れば怒り顔に。
そして、玄関ドアを……
「 お、碧斗~ 」
「 テメェはいったい、どんな脳ミソしてんだよ!!」
「 何なに、機嫌悪~ 伊織ちゃんいるだろ、ケーキ買ってきたんだよ~ん!」
こ、滉君……
「 よ~ん!じゃねぇんだよ、いちいち邪魔しやがって…… 帰れ!」
甘いキスが続くはずが、邪魔されて怒る碧斗に対し、笑顔で私にケーキを渡してくれる滉。
もう、私は苦笑しか出来なかった。
「 ありがと、滉君 」