絶対やせてやる!
「はい、もしもし。」

「あれ?お姉さん?」

「そうだよ。新くん?なに?」

「何って・・・これ・・ほのかの携帯だよね。」

「そうだよ。なに?」

「何って・・・ほのかが心配でさあ、かけてみた。」

「ふ~ん、それはそれは。」

「・・・ほのかは?」

「ああ、今歯磨きしてる。」

このバンガローって、かなり広くてトイレと洗面スペースが別に扉を隔てたところにあったりする。
こっちのフローリングのスペースは、さすが10人用だけあってほんとに広くて虫を追っかけるのにも逃げるのにも広すぎ。
天井も高いしどっから虫が降ってくるかも分からない。


「ほのかに代わって。」

「ああ、ちょっと待って、ほのか~。」

「何?」

妹が完全にスッピンになって戻ってきた。

外では絶対にスッピンは見せないから銭湯から帰る時もササッと化粧して出てきたぐらい。

「はい、新くんから。」

「何?あっ、ちょっと勝手に人の携帯に出ないでよ。」

「だって、鳴ってたんだもん。」

化粧を取った顔はちょっとかわいくて子供っぽいのだが、今はすごい形相なのでちょっと怖い・・・。


「新くんゴメンね~。」

甘えた声で携帯に出る妹。

顔つきまで変わる。

「うん、大丈夫。問題ないよ。
うん、早く会いたいね~。」

おいおい・・・つい先日会ったばかりじゃないの。


それから二人のラブラブ電話は、1時間以上続いた。

今日一日のことを話し終えると、

「じゃあね。新くん、おやすみなさい。」

最後にチュッ!ってやって妹は携帯を置いた。


そして・・・


「今度勝手に出たら殺す!」


さっきまでの甘い表情はどこかへ行ってしまっていた・・・。



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