そのなみだに、ふれさせて。
ふぅん、と。
どこか大人びて現実味のない瀬奈のつぶやきに、無意識に息を詰めたのは、どちらだったんだろうか。
……確かに、ちーくんが朝から来るなんてめずらしい。
去年までは翡翠も一緒だったから毎朝3人で学校に行っていたけど、王学の場所を考えるとちーくんはそのまま学校に行ったほうが早い。
それに瀬奈と一緒に登校するようになったから、高校生になってちーくんと学校に行くのははじめてだ。
……学校で会うのにわざわざ来てくれたってことは、大事な話、なんだよね。
「……瑠璃のこと泣かすなよ」
「大丈夫だよ。俺のことなんだと思ってるの?」
「紫逢と瑠璃が付き合ってることに、
何か関係してるんじゃないのか?」
──カチッ、と。
時計の秒針が、不自然に音を紡いだ気がした。
「せ、瀬奈……」
っ、この子余計なこと言っちゃったよ……!
火に油を注ぎにいっちゃったよ……!!
というか、いつの間に紫逢先輩とそんなに仲良くなったの!?
どうせ瀬奈が勝手に名前で呼んでるだけだと思うけど……!
「瀬奈、葛西先輩のこと知ってるの?」
「この間、瑠璃がうちに連れてきたからな」
「……へえ」
いつもやわらかな雰囲気のちーくんからは信じられないほどの、重低音。
残念ながら「怒ってる……?」なんて野暮な質問ができるほど、わたしのハートは強くない。