そのなみだに、ふれさせて。
「……結構本気じゃん」
ちーくんの口が、わずかに動いたのが見えた。
けれど水の音で、それはわたしの耳に届かなくて。気になったはずなのに、わたしはそれを問うことをしなかった。
「おまたせしましたっ」
用事を済ませ、荷物を持つと3人で家を出る。
……3人でこの道を歩くのは、会長との一件があった翌日、紫逢先輩が迎えに来てくれたあの日以来だ。
「昔からずっと思ってたことだけど。
瑠璃はさ、俺のこと全然眼中にないよね」
「う、っ」
それはつまり、恋愛対象に見てない、って話だよね……?
そういう意味で問われると、正直ちーくんのことは恋愛対象として見ていない。
だって、ずっと一緒に育ってきた翡翠とおんなじような感覚なんだもん。
付き合っていたときに手を繋いだことしかないのだってそうだし、男の人だって意識できたこともないと思う。
「知ってたから、いつか別れを切り出されることはわかってたし。
この間言ったように納得できてないってのも、結局俺のエゴ」
「そ、んなことないよ。
それなら、ちーくんの気持ちを知ってたのに紫逢先輩と付き合うことを決めたわたしの気持ちだってエゴだよ……」
そんなふうに、ちーくんに卑下してほしくないのに。
そうさせてしまうのはやっぱりわたしのせいで。
「まあ、最初は瑠璃にちょっとムカついてたんだけど。
……俺じゃだめだってことはもう分かってるよ」
そこまで話して、瀬奈との学校の別れ道にたどり着いた。
瀬奈は何も言わずにひらっと手を振って歩いて行ったから、ちーくんのことをちゃんと信頼してくれてる。
「ずっと好きだったよ」