そのなみだに、ふれさせて。
ちーくんが、わたしたちを置いて先に歩いていこうとする。
それがどうやら意外だったようで、紫逢先輩は「いいの?」とキョトンとしていた。
「はい。でも、瑠璃のこと泣かせないでくださいね」
……いつもの、ちーくんだ。
瀬奈に言われた言葉を今度は紫逢先輩にパスして、すこし足早に去っていく。
「泣かせるつもりはないけど……
あ、瑠璃。昨日電話で話した週末デート、どこ行きたい?」
「……どこでもいいですか?」
「うん、もちろん」
にっこり笑って、紫逢先輩がわたしの手を握ってくれる。
それを握り返して、昨日ひとりで考えていたことをそのまま口に出した。
「じゃあ、紫逢先輩の地元をまわりたいです」
「……俺の地元?」
「はい。
どんなふうに先輩がそこで育ったのか、教えてください」
わたしの知らない、先輩の過去。
産まれてから過ごしてきたその記憶を、わたしにも教えてほしい。
「いいけど、そんなんでいいの?」
「それがいいんです。ね?
先輩が言ったんですよ、どこでもいいって」
──ううん、知りたいの。
曖昧な感情なんかじゃなく、ひとりの男の人として、先輩のことを。

