Miseria ~幸せな悲劇~
美花が落としたボールは凪瀬高校サッカー部のキャプテン、大野怜(オオノレイ)の足元で止まった。
多くの生徒がジャージを着ているグラウンドで、大野だけは筋肉質な体に学校の制服を着ていた。
「どうした美花?今日は全然集中できてなかったぞ」
「お、大野先輩…」
ボールを拾いながら大野は美花に歩み寄った。
「ようやくレギュラーが取れて気が抜けたのか?そんなんじゃ私の復帰前に負けちまうぞ、凪瀬高校」
制服姿の大野は右足に何重ものテーピングを巻いていた。そのテーピングの下には痛々しい傷が隠れているのだろうと美花は思った。
「すいません…」
美花は落ち込んだ様子で生返事した。
「ほらっ!」
大野は美花にボールを投げて、美花はそのボールを足で受け止めた。
「しっかりな、美花、期待してるぞ」
そう言って大野は軽く手を振って立ち去ろうとした。