Miseria ~幸せな悲劇~


冷たい風が病院の屋上に吹いていた。普段は閉鎖されている屋上だが、不思議とこの日は何ら障害もなくここまで来れてしまった。


『La Fille Aux Yeux D'émail………』


空は暗く、曇っている。


眼下には夜の町の灯りがうっすらと見えた。


唸るように波打つ海の音が耳鳴りのように聞こえる。


『さて………』


私は靴を脱いで屋上を歩き出した。


『ふふっ…』


私は地上に落ちる寸前の場所まで歩くと、そこで目を瞑ったまま両手を広げた。


冷たい風を全身で浴びる。


このままどこへでも飛んで行ける気さえした。
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