Miseria ~幸せな悲劇~
『あなたがどちらの運命を生きるのか。今夜までに決めておいて。もし、あなたが背負うことになる不幸を省みず、私の力を借りて新しい自分として生きたいのなら……今夜、あなたの知っている通りのやり方で儀式を行い、もう一度私を呼びなさい…』
そう言うと喰イ喰イはベッドから離れた。
『待って、なら最後に一つだけ確認したい』
私は喰イ喰イを呼び止めて言った。
『何……?』
『私はその不幸によって、何か直接に危害を加えられることはあるの? 私が傷つくことはあるの?』
どうしてもこれだけは、知りたかった。不幸の代償を。私が被る不幸の重さを。私は天秤にかけた。
『直接的にあなたに危険は及ばないわ。だけど、新しく生まれ変わったあなたが、友人の死をどう思うかは、私にも分からない…』
喰イ喰イは無表情のままそう答えた。
つまりそれは、
『そう、なんだ…』
私にとって一切のリスクがないと言い換えてもいい。
『だったら、余裕じゃん…』
手にはいるものの方が圧倒的に大きい。
そう思った。
『どうせ、高校までの奴等と友達になったってさ。たかが知れてるじゃない…? あんなの、新しい私ならいくらでも代えがきくわ』
長い人生の中で、
友達の死なんてものは、一瞬の不幸に過ぎない。
しかも私にはそれ以上の成功と、
幸せが約束されている。
『だって、新しい私は、誰からも愛される私なんだから…! 誰もが憧れる私なんだから…! そうだよ、ふふふ、ふふふふっ、はははははははっ………』
笑いが込み上げて来る。
止まらない。
『ははははははははっ……!!!!!!』
だって、
詰まるところ殺される友人って……?
その人が存在した価値って……!?
『私という存在を約束する……生け贄みたいなものなのよね』