極悪プリンスの恋愛事情


こんなの………抱きしめられてるみたいだよ……。


あんなに嫌がってたくせに、どうして?

そう言いかけて喋るのをやめた。


きっと、なにを聞いても凛くんは答えてくれないと思ったから。

細かいことはもういいや。今は夢のような時間だけを感じていたい。


「もう二度とないからな」

「うん、ありがとう!」


今度こそ偽りのない笑顔で凛くんと顔を見合わせた。

すると、凛くんもほんの少しだけ笑ってくれたような気がして。


好きだなぁ、と。心の中で呟く。


初めて言葉を交わしたあの日より、凛くんに近づけているような気がする。

嫌いなのは知ってるけど、ちょっとは私のこと見直してくれたんじゃないかなって。


他の子とは違う特別な夜に自惚れる。


次に私が好きと伝えたら、なんて答えてくれるんだろう。


いつかの日に想いを馳せながら、音楽が止まるその瞬間まで、私達は手を離さなかった。


一緒にいられたのはほんの僅かな時間だったけれど。


王子様と踊ったこの夜は一生忘れない。

そう、思った。


< 146 / 313 >

この作品をシェア

pagetop