極悪プリンスの恋愛事情
こんなの………抱きしめられてるみたいだよ……。
あんなに嫌がってたくせに、どうして?
そう言いかけて喋るのをやめた。
きっと、なにを聞いても凛くんは答えてくれないと思ったから。
細かいことはもういいや。今は夢のような時間だけを感じていたい。
「もう二度とないからな」
「うん、ありがとう!」
今度こそ偽りのない笑顔で凛くんと顔を見合わせた。
すると、凛くんもほんの少しだけ笑ってくれたような気がして。
好きだなぁ、と。心の中で呟く。
初めて言葉を交わしたあの日より、凛くんに近づけているような気がする。
嫌いなのは知ってるけど、ちょっとは私のこと見直してくれたんじゃないかなって。
他の子とは違う特別な夜に自惚れる。
次に私が好きと伝えたら、なんて答えてくれるんだろう。
いつかの日に想いを馳せながら、音楽が止まるその瞬間まで、私達は手を離さなかった。
一緒にいられたのはほんの僅かな時間だったけれど。
王子様と踊ったこの夜は一生忘れない。
そう、思った。