極悪プリンスの恋愛事情
「じゃあ、俺は先に教室戻ってるから」
わっ、やば………!
中庭から出て行く岸本くんに気づかれないよう、深くしゃがんで身を隠す。
次第に遠ざかっていく足音に耳を傾け、完全に聞こえなくなってから、安堵の息を零した。
急にこっちに来るからびっくりしたけど、見つからなくてよかったぁ………。
覗き魔!ってまた怒られるかと思った。
まぁ、今回は自分の意思で隠れてたわけだし、言い訳できないけど。
情けなくて苦笑い。ストーカーと言われても、否定できなくなってしまいそう。
「ちっ、瑛斗のやつなんなんだよ。まじうぜー」
1人きりになった中庭から凛くんの声が聞こえた。
体勢を直して再び覗き込むと、荒々しく髪の毛を掻きむしる姿が見えた。
「真央の名前出すとか相当頭イカれてんだろ。嫌なこと思い出させやがって……」