極悪プリンスの恋愛事情
嫌なことか………と、口の中で呟いた。
きっと、真央って人が凛くんが女嫌いになった原因と関係してて。
思い出すのが嫌になるほど苦しい出来事だったんだろう。
性別も年齢も知らない誰かをこんなに知りたいと思ったのは初めてだ。
……私、凛くんのことが好きなくせに、何も知らないんだな。
極悪プリンスと呼ばれる彼の優しさに触れて、勝手に凛くんを知ったような気でいた。
そんなはず………ないのにね。
知らないことの方が多いって、なんて寂しいんだろう。
息苦しそうな凛くんを見ていたら、余計にそう思えて仕方がなかった。
「………花野井と瑛斗がデート、か」
ぽつりと呟くように吐かれた凛くんの声。
その声が私の元に届くことはなく、
冷たい空気に溶けて消えた。