極悪プリンスの恋愛事情

本当の気持ち



「岸本とデートする約束をしたぁ!?」


「ぶっ………!」


テストが終わってから数日。

向かい合わせでお弁当を食べていた皐月が、突然大声をあげた。

その言葉に驚いて、飲んでいた水が喉に詰まる。


ゲホゲホと咳き込む私を前に「うわっ、きたな」と、皐月が引き気味に言った。


「ちょ、皐月が急に…叫ぶからだよ………!」


口元に飛び散った水を拭いながら、落ち着かない喉で精一杯の声を出す。

今日一番の体力を使ったと言っても過言ではない。


「だって岸本とデートだよ!?叫びたくもなるでしょ!」

「だからってそんな大声出さないでよ!誰かに聞かれたらどうすんの!?」

「周りに誰もいないんだし、大丈夫だって!」


ニヤニヤと笑う皐月に不安しか感じない。


空き教室までご飯を食べにきて良かったと心から思った。


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