極悪プリンスの恋愛事情





「凛くん、何か食べたいものとかある?」


映画館に着くや否や、凛くんに向かって食い気味に問いかけた。

さっきの失態を取り返そうと私も必死なのである。


「別に何もいらねー」


けれど、凛くんは私の気持ちを1ミリも汲み取ってはくれない。

あっという間に会話を切られてもはやなす術なし。


うぅ…………辛い。

映画が始まるまで時間あるし、その間にこの歪な空気をどうにかできないかなぁ………。


「花野井こそなんか食いたいもんねーの?買ってやるけど」

「え?」

「俺映画代払ってねーし、花野井ってなんかすぐ腹減りそうじゃん」

「そんな食い意地張ってないよ……!?」


映画代のことを気にしてくれて優しいと思えたのはほんの一瞬。

私に対するイメージが最悪すぎてグサっときた。


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