極悪プリンスの恋愛事情
驚愕して呼吸が止まる。
今の……凛くんが言ったの?
大の女嫌いで、極悪プリンスとまで呼ばれた人が言う台詞とは到底思えない。
だけど、この場には私たちしかいないんだから、他の人の声が聞こえるわけがない。
それじゃあ、やっぱり………。
凛くんの様子がどうしても気になって、本棚の影から覗いてみようと試みた。
すぐに隠れれば気づかれないよね………!
本棚に手をかけて、少し顔を出すだけでよかったのに─────。
ガタンッ!
嫌な音が聞こえたのは、紛れもなく自分のせいだった。
緊張でふらついた足が勢いよく本棚にぶつかった。
やばっ………!?
と、思っても間に合うはずがなく、ちょうど脳天に本が落下。
「痛った〜」と、まぬけな声を出してしまった。
あぁ、もう!なんでドジばっかしちゃうんだろう!
もうちょっと器用に生きさせてくれたっていいのに!
「おい、覗き魔」
いつもよりワントーン低い凛くんの声。
目が合ったかと思えば呆れた顔で「やっぱり花野井って変態なんだな」と、言われてしまった。