お見合い結婚狂騒曲
「で、節分祭をするから、それを持っておいで、と誘われたの」
「行くの! イイわね。葛城家の行事ってどれも盛大らしいわよ」

羨ましそうに公香は言うが、「私は気が重い」と溜息を零す。

「どうして? 不都合なことでもあるの?」

有り有りだ!

「ゲストの前で圭介君のフィアンセだ、とお披露目するらしいの」
「やだぁ、着々と結婚への道を歩んでいるじゃない」

嬉々とした声が言う。

「これこそ、外堀を埋めろ作戦ね」

どこかで聞いた台詞だな、と思いながら、「埋められてもなぁ」と呟く。
葛城圭介と私の間に、まだ恋愛感情は生まれていない、と思う。

「ねぇ、今更だけど、公香が旦那様と結婚しようと思ったのは、いつ、どんなところで?」

「何よ急に」と笑いながら公香は天井を見る。

「そうね、覚えていないぐらい自然にそう思ったかな。会う度に好きになって、会う度に離れたくないっていう気持ちが強くなって。彼からプロポーズされた時は、このまま死んでもいいって思えるほど幸せだったわ」

「死んだら元も子もないよ」と言う私を、公香は溜息交じりに諭す。
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