お見合い結婚狂騒曲
「ロマンスのカケラもない子ね。それぐらい彼のことが好きなの。嬉しかったの! 真央だって葛城さんにプロポーズされたら……って、貴女、プロポーズされたの?」

ーーあれ、そう言えば。いいえ、と首を横に振ると公香が叫ぶように言う。

「何! プロポーズもなしに、婚約者としてお披露目! 有り得ない、何それ」

そう言われれば……そうかもしれない。
見合いというプロセスから、正常な感覚が麻痺していた。

「そうよね、お披露目にはまだ早いわよね」
「早くはないわ。お披露目の前にプロポーズしてもらいなさい!」

ーーこの女も無茶苦茶だ。

「こうなったらグズグズしていられないわ。アッ、我が家の分の恵方巻きはこれね。ありがとう、またね」

彼女だって御曹司と結婚したのだから、シェフに作ってもらえばいいものを……台風の目のように去って行く公香の後ろ姿を見送り、まぁ、祖母の味が好きと言ってくれるからいいけど、とソファにゴロンと横になる。

「プロポーズ」と口に出して言ってみる。

「ダメだ、異世界の言葉みたいだ」

気持ちが付いていかない……どうしてだろう。葛城圭介との結婚が嫌なのか? イヤ、問題はそこではない。そもそも私は結婚したいのか?

ガバッと起き上がり、腕を組み考える。
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