お見合い結婚狂騒曲
酔った頭で反論するのも面倒くさく、言いたいように言わせておく。

「でもさぁ、瑠璃が黙って引き下がるかしら」

突然、公香が素面のような真面目な顔になる。

瑠璃という子を知らないからだろうか、想像上の彼女は、白雪姫に出てくる魔法使いのお妃様だ。「鏡よ、鏡よ」とナルシストよろしく、毎日、自分の顔をウットリ眺めているイメージだ。

「あの子ね、小泉家直系、本家当主の子なの。花香さんの旦那さんは分家の当主なんだけど、小泉家は代々本家筋が采配を振るってきたの」

へー、そうなんだ、と白雪姫の世界はガラガラと崩れ、横溝正史の世界が浮かぶ。
うわぁ、湖に二本の足が突っ立つとかは嫌だな、と想像しブルッと身震いする。

「だから、小娘なのに、やたら高ビーで、花香さんに対しても威圧的なの」

ナヌッ、それは聞き捨てならない。憧れの君を虐めているのか!

「でね、昨日、公香さんに聞いたの。そんなプライド有り子ちゃんが、どういう経緯で、二十歳も上である葛城さんに執着するのか」

あれ? もしかしたら、今日、押し掛けてきたのは、それを話したかったから?
< 56 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop