お見合い結婚狂騒曲
でも……公香の推理が正しければ、葛城圭介には、怪物のような存在の誰かが居るということになる。その怪物のせいで彼はアンドロイドになったのだろうか?

「ーー何、葛城さんのことが気になる……エッ、もしかしたら、好きになったの!」

公香の目の色が変わる。
面倒くさい女だ。

「ならない。ただ、あそこまで無表情って、人間であることを放棄しているみたいじゃない? そういうところが不思議なの」

複雑な環境で育った私でさえ、喜怒哀楽は忘れなかった。それもこれも祖父母が居てくれたからだと思う……彼にはそういう人が居なかったのだろうか。そんな疑問がずっと付き纏っている。

だからだろう、あの時、一瞬見せた幻のような笑みが心から離れない。
あれは真の笑みだった。

「まぁ、真央の言いたいこともよく分かるわ。何となく、二人って同じ匂いがするのよね。言うなれば、似た者同士?」

ハァァと公香をマジッと見る。

「全く別人、赤の他人。どこが似ているっていうのよ」

本当、いい加減な女だ。

「そう? 知らぬは本人たちばかりなり……かっ」

クッと意味深に笑い、公香はグラスのお酒を飲み干す。
嗚呼、なんかヤダ、この女!
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