星の降る夜、僕は君に嘘をつく。
そして着実に成長して行く彼女はダントツに上手かった。

あの表現力には私たちは勝てない。
実力で抜かれるのもそう遠くはないことも理解していた。

そしてもうひとつ気付いた。

聖也が彼女を見つめる目は後輩に対する優しさとは違うものがあった。

佐伯心春という一人の女子として見ていた。

心春がどうしても出来ないふりがあると私たちに相談してきた時から私たち3人は毎朝部室で会っている。

聖也は凄く丁寧に彼女に教えるんだ。
しかも腕の角度が伝わらない時は聖也は自分で彼女の腕を直す。

「―っ!」

私は言葉にならない叫びを噛み殺し、平静を装って拍を取る。

彼女が選抜入りしたときには素直に嬉しかった。
その次の日、彼女は私たちの前で初めて涙を見せたんだ。

聖也はそんな彼女をそっと抱き締めたんだ。
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