明け方の眠り姫


「……ちょっと、要くん笑いすぎ!」

「ゴメン。……だって、予想外だったから」


 式場から逃げ出した私は、要くんの仕事用のバンに乗せられて自分の部屋へ帰って来た。

 ただでさえ仕事が忙しい上に、絵の買い付けで数週間に渡り留守にしていた私の部屋は、見るも無残な状況――はっきり言って、ぐちゃぐちゃだった。


 毎朝のように会うカフェでは、隙のない姿で年上ぶった態度を取って来た。これじゃあ全てが台無しだ。

「……夏希さんって、何事にも無頓着な人?」

 要くんは、私が乾燥機にかけたままソファーに投げていた部屋着を丁寧に畳むと、ガラステーブルの上に置いた。

「違う。最近仕事が忙しくて家事にまで手が回らかっただけだから」

「ふうん。まあそういうことにしといてあげるよ」

 笑みを浮かべながらそう言うと、要くんはソファーに腰かけた。


「ん? なんだこれ」

 お尻の下に手を入れ、何かを取り出す。下着だった。部屋着と一緒に洗ったのをすっかり忘れていた。

「ちょっと、それ返して!」

 慌てて要くんの手からひったくる。

「夏希さん、無頓着にもほどがあるでしょ」

「……悪かったわね」

 とうとう我慢できなくなったのか、要くんは声を上げて笑い出した。目の端に涙まで溜めている。これじゃあ、年上の威厳も何もあったものじゃない。

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