明け方の眠り姫
「夏希さん大丈夫?」

「ああ……、うん。大丈夫よ」

「本当に? でもお化粧全部崩れちゃってるよ?」

 更に顔を近づけられ、口ごもる。この子には、あまり弱っているところを見られたくない。


「帰る? それとも化粧直しに行く?」

 あんなに泣いたのだ。たぶん私の顔は、そう簡単には修復できないはずだ。

「……帰りたい」

 そう小さな声で答えると、要くんは私に背を向けきょろきょろと辺りを見渡した。


「何してるの?」

「目立たないように僕が外に連れ出してあげる。夏希さん、僕の背中に隠れてなよ」

「……ありがとう」


 本当は不本意だ。だが今は仕方ない。私は要くんに甘えることにして、彼の背を盾に式場を抜け出した。

< 12 / 36 >

この作品をシェア

pagetop