明け方の眠り姫
「そんなことより要くん、仕事に戻らなくていいの?」

 さっきの失敗を早く忘れてもらおうと話題を逸らす。

「うん。さっきのとこで配達最後だったから、今日はもう大丈夫。時間はあるから」

「はい?」

「とりあえずキッチンかな?」

 言うなり要くんはキッチンへ行き、私が溜めこんでいた食器を勝手に洗い始めた。


「ちょっと、そんなことまでしなくていいから!」

 要くんから泡のついたスポンジを奪おうと手を伸ばすと、見事にかわされた。

「僕がやるから。そんなことより、夏希さん顔洗いに行ったら? 目のまわりパンダみたいだよ」

「えっ、うそっ!?」

 慌てて洗面所に駆け込むと、不格好なパンダ女が鏡を前に、頬に両手を当て叫んでいた。


「なにこの顔。ひどすぎる!!」

 叫び声を上げた途端、キッチンから要くんが盛大に吹き出す音が聞こえてくる。


 私は両手にメイク落としをたっぷり乗せると、顔中に滲んだメイクをざぶざぶと洗い落とした。

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