明け方の眠り姫
 キッチンに戻ると、要くんはとっくに食器を洗い終えていた。勝手に冷蔵庫を開け、中に頭を突っ込んでいる。


「要くん?」

 要くんは後ろを振り向くと、私の顔を見て頬を緩めた。

「……やば。夏希さん、ちょーかわいい」

「私、すっぴんだよ。からかうのはやめて」

 アラサー女になに言ってるんだ、この子は。


 要くんの手前、ほんのちょっとだけ迷ったけれど、顔を洗い終えた私は、そのまますっぴんでいることにした。

 泣きはらした目が腫れていたけれど、家ではなるべくすっぴんで過ごしたいのだ。外で肩肘張っているぶん、一人のときはメイクも、アクセサリーも、余計なものは全部脱いでリラックスしたい。


「しかも上下スエットだし」

「これが一番楽ちんなのよ。家の中でまで気取っててもしょうがないでしょ?」

 要くんには、泣いてぐちゃぐちゃな顔を見られた上に、汚部屋まで曝したのだ。今さら取り繕ったって仕方ない。

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