明け方の眠り姫
「そんなことより要くん、冷蔵庫の中に頭突っ込んで何してるの?」

「夏希さん、あれだけ泣いたからお腹空いたでしょ? 僕がごはん作ってあげる。外に食べに出てもいいけど帰ったばっかだし。それに夏希さん、そんな気分でもないでしょ?」

 そう言ってシンクの下から包丁を取り出すと、冷蔵庫に残っていたらしい野菜を豪快に刻んでいく。


「えっ? ちょっと、そんなことまでしなくていいから――」

 再び要くんの手を止めようと近づくと、空っぽのお腹が盛大に音を立てた。

「……体は正直だね、夏希さん」

 わざと意味ありげな言葉を吐いて私の顔を見ると、要くんは肩を揺らして笑った。


「いいから、夏希さんはあっちに座っててゆっくりしてなよ」

 冷蔵庫から取り出した缶ビールとグラスを私に手渡すと、要くんはふざけた顔で、犬にでもするようにしっしっと片手を振った。
 
「……そうさせてもらうわ」

 あまりの空きっ腹具合とビールの誘惑に白旗を上げた私は、要くんに料理を任せて、大人しくリビングへ消えた。

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