今の私は一週間前のあなた
「俺、邪魔みたいだから先帰るわ」

修也がカバンを片手に笑う
驚いて何も言えないでいると修也は私に背を向けた
振り返ってはくれない

「え…!」

「じゃあな」


待って
待ってよ

一緒に帰るんじゃなかったの
それに…


なんでそんな苦しそうに笑うの…?



相良くんと2人になって
静かになった教室


私は強く両手の拳を握った

「相良くん…ダメだ。私…ダメだよ」
ポツリと呟くと相良くんが強く握りしめた私の手に触れる
すると、自然と力が抜けてしまう


「俺は藍乃さんを幸せにするよ…?」

どこまでも優しくて
このまま付き合ったら幸せになれるかもしれない
そう思ってしまう
けれど
相良くんもまた、私の気持ちを知ってるみたいに辛そうに微笑んでいる



私だけ、嘘はつきたくない
自分の心に嘘ついていたって
きっと幸せにはなれない



「こんなんじゃ…!
こんなんじゃ誰も幸せになれないよ、私…
私が好きなのは…!」

修也だからっ!

そう言おうとすると


クルッと相良くんに後ろを向かされ
トンッと軽く背中を押された

前に見えるのは廊下
修也がさっき通っていった廊下


「伝えなよ。藍乃さんの気持ち
きっと…きっと修也に届くから」


「…ごめんね」


私がそう呟くと相良くんは微笑んだ

「ありがとう、って言ってくれたら嬉しいな」

私は修也が好き

相良くんは今のきっと私よりも苦しい気持ちでいるはず

なのに
背中を押してくれた




「相良くん!ありがとう!」


私は全速力で走り出した
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