今の私は一週間前のあなた


「違う!死んでなんか…」



「死んでなんかない!」
そう叫ぼうとすると
乃々は焦って言い返す私の肩を強く掴んで激しく揺らす




まるで




目を覚ませと伝えるかのように。




「死んだんだよ!もう戻ってこない。
こっちが現実…
現実をちゃんと見なよ…!」




現実をちゃんと見る…?
夢…?
そんなのやだ。



ねぇ…やだよ…

「…私、こんな現実やだよ…」


ポツリと呟くと乃々は悲しそうに顔をしかめた

その姿を見て私は自分に絶望してしまう

私は、現実を受け止めてなんかいない
後悔はずっと続いて

修也のことを忘れようとすればするほど
私を縛った鎖が

強く

つよく


私を縛るのだ




頭の中で黒色の私が俯いている




『未来
って…なに?
進むって…なに?
一週間で私は死ぬんじゃん。なのにそんなむだなことをするの?』



黒色の私がそう
私に問いかける



白色の私は悲しそうに黒色の私を見つめて、
逸らそうとはしない



『昨日、決めたんじゃないの…?
前に進むって、決めたんじゃないの…?
私を変えてくれた乃々に、感謝したんじゃないの…?』




訴えかけるような言葉に混乱して、

頭の中がぐちゃぐちゃだ。



なのに、白色の私と黒色の私は一心に“私”に答えを求めてくる


『…そんなの、知らないよ!』


そう叫んでも
苦しい胸も
痛い頭も
痛みを増すばかり。




自分の中で自分と自分が葛藤している





黒いところと白いところが
交わって境目がわからなくなって
曲がって捻れて
自分の気持ちをどこに向ければいいのかわからない





確かに
前に進むって決めた



確かに
感謝した




それでも
現実を




修也が死んだという現実を受け止め切ることができないのだ




夢であってほしいと願ってしまう




「……彼氏が好きなのは知ってるよ……」



私と同じ声で乃々が呟いた
ポツリ、ポツリと
小さな
ちいさな言葉を紡ぐように


「…それでも…あなたが変わらないと…
現実を受け止めて
未来を見ないと。
…私は…あなたをたすけたいの

…あなたに……笑ってほしいの…」



力の抜けたような
祈るような言葉に

なにも声が出ない


どうして…?
どうして私にそんなにも手を差し伸べてくれるの?

どうして、こんな私を救おうとしてくれるの?

どうして、



私を愛してくれるの……?



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