君の背中に見えた輝く翼に、私は恋に落ちました
そして迎えた放課後。

天使の森で話すことになったのだけど…

お店に入るなり、璃子は透さんに

とんでもない事を言い出した。

「透さん…今日クローズしてくれる?」

「えっ!?璃子、そこまで

しなくてもいいよ!」

聞こえているはずの、わたしの

声を無視して、

表情を変えないまま、

透さんは璃子の言う通りに

お店を閉めてしまった。

そしてみんなで一緒に

ドリンクを頼み、

わたしと璃子の指定席…

窓際の丸テーブルに座った。

「それで…話さないと

いけない事って?」

わたしはみんなが席に着くのと

同時に、本題を切り出した。

「流羽…ごめん。あの…」

わたしを見る璃子の目元が

潤んでいて、今にも涙が

こぼれそうになるのを見て

わたしは、確信した。

少し予感はしていた。

きっとわたしのことで璃子は

話せなかったんだって。

「璃子が謝るのは違う…

わたしのことで何かあって

話せなかったんだよね?

それって…足の事?」

「っう…ふ…」

璃子の目から涙がこぼれた瞬間、

わたしはまた璃子に

辛い思いをさせていたんだと

気付いた。

わたしの知らないところで

守ってくれてたんだね…

わたしが傷つかないように。

「璃子…またわたしのせいで

辛い思いさせちゃってたんだね。

ごめんね?」

璃子は泣きながら頭を振る。

わたしと璃子を黙って

見守るみんなに、

わたしは目を向けて話した。

もう大切な人を辛い思いや

悲しい気持ちにさせたくなかった。

それに…

ここにいるみんなは

信じられるって思った。

一緒にいる時間は短くても、

わたしのために、

こうしてここに来てくれた。

それだけで十分だと思った。

人間、誰だって生きていれば

話したくない事が1つや2つ…

あって当然だよね。

話せないことも…

辛い経験をしたなら

尚更のこと。

でも…

それを隠した事で大切な人を

苦しめることになるなら、

わたしは自分を守ることを

やめなくちゃ。

「もう知ってると思うけど…

わたしの話を聞いて欲しいです」

そして、わたしは自分の

生い立ちから、足の事…

背中の火傷の事も

全て包み隠さず話した。

話した事で気を遣わせることに

なるかもしれないと思った。

けど…わたしは。

可哀想な子ではなくて普通の…

どこにでもいる人間だと

知って欲しかった。

自己満足なのかもしれない。

余計な荷物を背負わせた

だけかもしれない。

わたしといる事で

周りから好奇の視線を

向けられるかもしれない。

でも…それでも…わたしは。

「身体はこんなだけど、

これからも普通に…

周りの人と同じように

接してくれたら嬉しい」

わたしは精一杯の笑顔を

みんなに向けた。

「いつか、わたしも…

みんなを守れるような、

強い人になりたいな」

みんながわたしを

守ってくれたように…

人って、自分のことだと

足踏みしちゃうようなことが

あるけど、誰かの為なら

こんなにも、前向きに

向き合うことが出来るんだ…

簡単なことじゃないけど、

それは、わたしの背中を押すのには

十分なことなんだって、分かった。

こんな身体で、自分には

何も出来ないって、いつからか

諦めてた。

自分を守ることで

精一杯で、周りが見えていなかった。

ううん…見ようとしなかった。

知られることへの怖さと

知られたあとの、みんなの

視線や言葉に、立ち向かう

自信が持てなかった。

だけど、ここにいるみんなが

わたしにとって、大切な人だって

分かった…

「わたしね…昔から、

璃子に守られてばかりで、

それに甘えてたの、情けないけど…

でも、高校生になって

それじゃいけないって思った。

守られているばかりじゃ、大切な

人達が、苦しんでいるとき

何もしてあげられない。

そんな自分が嫌だなって…

自分を守ることで、誰かが

苦しい思いや、悲しい気持ちに

させるなら、わたしは逃げも

隠れもしない。

ありのままの自分を、さらけだそう

って思った。

みんなと違う自分に自信を

持てなかったけど…

今は、これがわたしですって

胸を張って言える。

みんなに出会えたからだよ?

本当にありがとう!」

みんなの表情が、ここに来た

時よりも和らいで見えた。

「流羽…強くなったね」

涙を拭い、笑ってくれた璃子に、

わたしは、心からの笑顔を返した。

「話づらいこと、話してくれて

ありがとう…」

涙目になりながらも、笑顔を見せて

くれる聖奈ちゃん。

「ううん、こちらこそ

聞いてくれて、ありがとう」

「流羽ちゃんは、本当に

強くてカッコイイ!

ますます好きになっちゃう!」

ニコニコ笑う日向くん。

「カッコよくなんて…

日向くんには敵わないよ!」

そう言うと、顔を真っ赤にして

頭をガシガシ掻いた。

「うわ…照れてる、キモい!」

璃子のストレートな言葉に

「璃子っち、ひどい…」

と、肩を落とす日向くんに

みんなは大爆笑。

あー…耳と尻尾が垂れてる。

わたしは、日向くんの頭を

撫でてあげた。

「璃子の言葉は、気にしなくて

大丈夫!

挨拶がわりみたいなもので、

本心じゃないから」

笑って見せると…

日向くんは、目をうるうるさせながら

尋ねてきた。

イケメンの上目遣いは、

破壊力が半端じゃないな…

「…ほんと??」

「うん!璃子のことは

小さい頃からの付き合いだから

分かるの。

だから、大丈夫!」

それを聞いて、璃子が

わたしをジト目で見てきたから

わたしは、ペロッと舌を出した。

だって、本当のことだもん!

不意に、頭に温かいものが

触れて、見上げると…

桐生くんが、優しい眼差しで

見つめながら、頭をポンポンして

笑った。









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