記憶を失くした少女【完】
「別に今更お前らに何かしようなんて思わねぇ。それに綺羅が楽しそうに話す友達だ。しかし、これだけは言っとく。綺羅は転校させる。もうお前らと関わることはないだろう」
「え、凌馬………転校の話まだ考えてたの?」
「当然だ」
え…………………転校とか嫌だ!!!
「そんな勝手に決めないでよ………!」
「これは綺羅の為を思ってだ。またこんな事起きても俺は気づいてやれねぇかもしれない。それに、後少し遅かったらお前は危なかったじゃねぇか」
それは……………………………………そうだけど。
「綺羅に何かあったのか!?」
「俺が来るのがあと少し遅かったら襲われてたんだよ。だから、お前らには任せられねぇな」
そんなこと言わなくてもいいのに………………。
「じゃあな」
そう言って凌馬さんは私をバイクに乗せた。念の為ヘルメットもかぶせて。
本人は私にあげたからノーヘル。
「綺羅!!!!」
私の名を呼ぶ遥輝の声。
「綺羅!!!」
「綺羅ちゃーん!!!」
皆も私の名前を必死に呼ぶ。
行きたくなくて皆の方を振り返るけど、綺羅ちゃんのあの言葉を思い出し、いたたまれない気持ちになった私は、凌馬さんの方に視線を戻した。
『綺羅ちゃんが悪いんだから!!』
『萌の居場所を奪った!!!』
そう。私は元は萌ちゃんの大切にしていた居場所を奪った。萌ちゃんに酷いこともたくさんした。