記憶を失くした少女【完】
あれからその男の人に教えてもらった情報は、私が地元の蒼坂(あおざか)高校に通う2年B組の山田綺羅ということ。
私の家族はいるらしいけど、別のとこに住んでいて住所までは知らないらしく、連絡は取れないとのこと。そして、今は学校から徒歩20分のとこにあるアパートで私は独り暮らしをしているらしい。
何だか訳ありっぽいよね。
そして、この男の人は佐伯凌馬(さえき りょうま)さん。25歳。
バーを営んでおり、私はそこの常連だったらしい。
それもあり親しくなったそうで、ケータイの最初の履歴に凌馬さんがあった為連絡が入ったらしい。
前のケータイは壊れた為使えないそうだけど、メモリーは何とか大丈夫だそうで、新しいケータイにメモリを差し込んだら、前のデータが使えた。
断ったんだけど、凌馬さんがケータイくれたんだよね……………………。心配だからって。
起きたときのあの心配そうな顔もそうだけど、相当私は凌馬さんの世話になっていたのかもしれない。
取りあえず、復元したデータを見てみる。
「……………………うわっ。何これ…………」
LIMEのアプリのとこには通知100と表示されており、軽く恐怖を感じた。
しかも、ほとんど……………………男の人だし。
『今日会えないの?』
『今どこ?』
『高くつけるから、ホテルで待ち合わせしようよ』
………………………一体前の私は何をしていたのだろう。考えたくもない。
『無視するな』
………………………怖い。
私は嫌悪感を抱きつつ、全てのデータを削除した。
というか、LIME自体のデータを消して新しく作り替えたといった方が早い。
「ん?LIME消したのか?」
「作り替えただけです」
凌馬さんは時間を割いてよくここに顔を出してくれる。
「じゃあ、新しい方登録していいか?連絡取るとき必要だし」
「……………別にいいですよ」
「決まりな。ほら、QRコード見せて」
_____ピコンッ♪
〈凌馬が友達になりました〉
「これで良し!」
私の作り直したLIMEに1人追加された。
「そういえば、敬語じゃなくていいよ。知らない中でもないし」
「え………」
いや、こっちは知らないんだけど。
「いつも通り呼んでくれた方が俺的には嬉しいし、もしかしたら思い出すかもじゃない?(笑)」
冗談っぽく凌馬さんはそう言って笑った。
でも、確かに前言ってた呼び方の方がもしかしたらしっくりくるかも……………。
「分かった」
「そうそう!それでいいよ」
タメで言ってみると凌馬さんは何だか嬉しそうだった。