記憶を失くした少女【完】


【side遥輝】













______ガチャ。

「あ、来た」

「お前遅すぎ!もう昼休み終わんだけどー!」

「提出する書類仕上げてたら遅れちゃってぇ~」


残り15分ぐらいというとき、萌がやってきた。

走ってきたのだろう。髪が少し乱れている。


手を伸ばし髪を軽く整えてやる。

「え……っ!?どうしたのぉ!!?///」

分かりやすいほどの動揺をする萌。まぁ、何も言わずに急に髪を触ったのだから当たり前の反応だ。


「走ってきたんだろ」

「あ、良くわかったねぇ~!」

萌はその言葉で今の行動を悟った。


待ってる俺達のためにわざわざ走ってまでして、急いできたんだと思うと、俺達はコイツに愛されてるなぁって思う。


「俺らに言ってくれりゃ、俺らが手伝ってやったのに」

「ん~、別にいい。自分の仕事なんだから、自分でする!」

「相変わらずお前は偉いなぁ~」


俺らに頼んで手伝った方が絶対早いのに、萌はそんな事はしない。


自分の力でやるという心意気や、気遣いの心。そして、喋り方とは違ってそんな真面目な性格に、俺らは徐々に惹かれ始めた。

仲間として。


大平があのとき言っていた言葉の意味が分かる。


他の女とは違うって。


ここの女どもは何ていうか権力に群がるメスサルだ。

気にいられるために媚び、甘い香水をふり、甘い喋り方をする。キツすぎてもはやそれは異臭だ。


パンダみたいな濃いメイク、下品な笑い方。


他校の女たちもそうだ。所詮俺らを物としか見てねぇ。


だから、俺は女が嫌いだ。


でも、その中でも萌は平気だ。



< 80 / 245 >

この作品をシェア

pagetop