記憶を失くした少女【完】
【side遥輝】
______ガチャ。
「あ、来た」
「お前遅すぎ!もう昼休み終わんだけどー!」
「提出する書類仕上げてたら遅れちゃってぇ~」
残り15分ぐらいというとき、萌がやってきた。
走ってきたのだろう。髪が少し乱れている。
手を伸ばし髪を軽く整えてやる。
「え……っ!?どうしたのぉ!!?///」
分かりやすいほどの動揺をする萌。まぁ、何も言わずに急に髪を触ったのだから当たり前の反応だ。
「走ってきたんだろ」
「あ、良くわかったねぇ~!」
萌はその言葉で今の行動を悟った。
待ってる俺達のためにわざわざ走ってまでして、急いできたんだと思うと、俺達はコイツに愛されてるなぁって思う。
「俺らに言ってくれりゃ、俺らが手伝ってやったのに」
「ん~、別にいい。自分の仕事なんだから、自分でする!」
「相変わらずお前は偉いなぁ~」
俺らに頼んで手伝った方が絶対早いのに、萌はそんな事はしない。
自分の力でやるという心意気や、気遣いの心。そして、喋り方とは違ってそんな真面目な性格に、俺らは徐々に惹かれ始めた。
仲間として。
大平があのとき言っていた言葉の意味が分かる。
他の女とは違うって。
ここの女どもは何ていうか権力に群がるメスサルだ。
気にいられるために媚び、甘い香水をふり、甘い喋り方をする。キツすぎてもはやそれは異臭だ。
パンダみたいな濃いメイク、下品な笑い方。
他校の女たちもそうだ。所詮俺らを物としか見てねぇ。
だから、俺は女が嫌いだ。
でも、その中でも萌は平気だ。