記憶を失くした少女【完】
ここにいると時間の流れが早く感じる。
気づいたらもう22時になるところだった。
「そろそろ帰れ。明日も学校だろう」
「……………うん」
この場所が賑やかだから、家に帰ると急に静かに感じちゃうんだよね。
ずっとここに入れたらいいのに。
なんて、言えないけど。
「夜中は冷えるから、これ着て帰れ」
「え?」
凌馬さんはそう言うと私に、深緑色のジャンバーを渡した。
「これ、凌馬さんのじゃ……」
「俺は別に平気」
そのジャンバーは中がもこもこしていて暖かい素材で出来ていた。
メンズ用だから、ブカブカだけど、とても暖かい…………。
「ありがとう」
「気をつけて帰れよ?この辺ガラの悪い輩がたむろったりしてるから」
「うん」
私は凌馬さんに「またね」と言って、お店を後にした。