記憶を失くした少女【完】







凌馬さんのバーの辺りは居酒屋や夜のお店とかが多い。

繁華街だけあってこの時間でもひと通りは多いが、ガラの悪そうな人たちもよく見かける感じの夜の世界。


凌馬さんのバーにも色んな人がいて、もちろんそんな怖そうな人たちもいるけど、基本みんな良い人そうな人たちだった。


近くの飲み屋から酔っ払った中年の男がふらふらしながら出てきたのに気づかなかった私は、避けることできずに後ろから衝突されてしまった。


「いたた~…………あはは!ごめんねぇ!!」

陽気そうな男からは、ものすごいお酒の臭いが漂っていた。


「私は平気です。……それより、おじさんは大丈夫?立てますか?」

座りこんだ男に上から手を差し伸べる。


あまりにも酔っ払った人には絡みたくないけど、このままじゃ危ないし放っとけない。


「悪いねぇ。よっと!」


私の手を掴むと自力で立ち上がり、茶色のコートをパッパっと払う。

格好的に会社帰りに飲みすぎたパターンの人だろう。

普通のサラリーマンといった感じの見た目。


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