記憶を失くした少女【完】
車に揺られ15分。私の家だというアパートに到着した。
思っていたよりボロくなく、かといって新しくもない。
普通のアパートといった感じた。
「鍵はお前の鞄の中に入ってる」
そう言われ持っていたスクールバッグの中をあさり、ポーチの中から鍵を取り出した。
______ガチャ。
玄関から廊下を進み、リビングへと向かう。
キッチンは別になっているが、リビングと寝床が一緒の部屋。
まぁ、独り暮らしならこれぐらいがちょうどいいか。
それにしても気になるのが……………………、
「なに、この真っピンクの部屋。気持ち悪い」
いかにも女子って感じで白いドレッサーの上にはキラキラした化粧品がたくさん置いている。
「このクマのぬいぐるみ……………デカい」
腕で抱えても若干はみ出る可愛らしい顔のクマのぬいぐるみ。
「あ、それは俺があげたやつだ」
「え、そうなの?」
「あぁ。誕生日プレゼントにクマのぬいぐるみが欲しいって言われてさ、それやったんだよ」
………………へぇ。
本当に結構親しかったようね。
しかも、そもそも家知ってるとか何でって感じだし……………。
「その顔はなぜ俺が家を知ってるかって顔だな?」
「え!!」
こ……………この人エスパー……っ!?
「綺羅のことなら、分かるさ(笑)」
「………………怖っ」
「何だよ、その目は!お前が教えてくれたんだろ!?」
「私、知らないし」
「くそ~……。負けたわ(笑)お前と口で勝ったことねぇわ本当」
スゴく悔しそうにする凌馬さん。
……………………なんか。
「可笑しい(笑)」
大人のになんか子供みたい(笑)
「やっと笑った」
「え?」
「入院の間もそうだけど、目を覚してから笑ってなかったから」
………………確かに。目を覚してから今初めて笑ったかも。
「『笑うことはいい事なんだよ。嫌なことだって忘れられる。明るい気持ちにしてくれるんだ』」
______っ!!!
「…………………」
一緒何かの言葉がシンクロする。
でも……………思い出せない。
「気分悪そうだな?無理は良くないから、もう休め。ここに俺のやってるバーを書いてるから暇だったら会いに来てよ。俺も会いに来るし」
そういうと住所と場所を示す地図が書かれた紙を机の上に置くと帰って行った。