本日、結婚いたしましたが、偽装です。
佐藤と一緒にビルの外に出た。
一気に冷えた冷気を感じる。
……結構、寒いな。
「車、出してくるから少しここで待っててくれ」
俺は佐藤にそう言い残すと、足早に地下駐車場に向かった。
こんな寒い中佐藤を待たせるのは悪いなと思いながら、俺は車に乗るとエンジンをかけてすぐに暖房をつけた。
温度を少し高めに設定してから、車を走らせると地下駐車場から出て、専用出入り口を通り抜けて、会社のビルの前に横付けをした。
佐藤は、キョロキョロと辺りを見回してから俺の車を見つける。
なかなか動き出そうとしないので、俺は運転席から降りると、歩道に上がった。
「佐藤、寒いから早く乗れ」
佐藤に近づいた俺は、佐藤の背中をそっと支えると、車に乗るよう促す。
「は、はい…」
歩道側の助手席のドアを開けて、佐藤が乗り込むのを確認してから閉める。
……あ、さっきもう触れないと決めたばかりなのに、背中に手を……!
自然な感じで佐藤に触れてしまう自分を睨め付けてから、俺は運転席に乗り込んだ。
さてと、これからどこに行くか。
食事に行くのだから、レストランとかだな。
でも、どこがいいか、だな。
「まあまあな時間だな。飯はどこにする?好き嫌いはあるか?」
俺は、右手首を返して腕時計を見ると時間を確認する。
9時過ぎだが、まだ開いている店はあるな。
どこにしよう。
行きつけの美味い肉料理の店もあるし、ジューシーな小籠包が絶品の中華料理もあるし、パスタの麺の種類が豊富なイタリアンレストランもある。
だがまずは佐藤の好みを聞いてから、どこに食べに行きたいか決めよう。
「あ、えっと、…好き嫌いは、ないです」
佐藤はどこかそわそわしながら、そう言った。
……聞いていた通り佐藤は、好き嫌いはないのか。
なら……。
「じゃあ、何が好きなんだ?」
「え?」
佐藤の食の好みを本人から直接聞くチャンスだと思った俺は、どこかワクワクして身を乗り出すように身体を傾けて、佐藤に上体を近づける。
先ほどから俯いている佐藤の顔を覗き込む。