本日、結婚いたしましたが、偽装です。


佐藤を見ると、佐藤は下を向いて、深く眉根を寄せてどこか思い詰めたような表情をしていた。


……っ、少し、きつく言い過ぎたか。


罪悪感が、ちくりと胸を刺す。


俺は佐藤に勘違いをされて怒って、責めるつもりで言った訳じゃない。


だけど、佐藤には俺の気持ちはまだ伝わっていないようだ。


佐藤がすぐに俺が怒っていると言ったのは、俺が普段から佐藤にそういう態度ばかり取っているからだろう。


でも、今は、決して怒っているんじゃない。


確かに至らない自分に怒っているかもしれないが、一度は受けた誘いを後から断れたことには全く怒ってはいない。


どうして、それが伝わらないんだ?


俺はドアから身体を起こすと、口を開いた。


「佐藤、どうして、あの言葉で俺が怒っているなんて思ったんだよ。全然、俺怒ってねえぞ。怒っていると佐藤にそう疑われるのは、俺がいつも怒ってばかりだからなのか?それなら、いつもすまない。俺の言い過ぎる性格が、無自覚にお前を傷付けていたのなら謝る」


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