本日、結婚いたしましたが、偽装です。
今までの出来事がまだ信じられない気持ちで、俺はマンションに戻った。
さっきまで佐藤が居たリビングに行き、佐藤が座っていたソファーに座る。
……まだ信じられない、約一時間前まで佐藤がここに居たことが。
俺の手料理を食べていたことが。
その前に佐藤の顔芸で笑っていたことが。
不意にその時の豆鉄砲を食らった鳩みたいな佐藤の表情を思い出して、ふふっと笑う。
佐藤、会社じゃ絶対に見れないけど、あんな顔もするんだな。
短い時間の中で起きた、些細で小さな輝かしい出来事がいくつも、何度も、浮かんだ。
佐藤と食事に行くという約束が出来たことが嬉しくて、行く日が待ち遠しかった。
まだいつ行くか細かなことは決めていないけど、佐藤の気持ちや予定を優先しなければいけないけど、でも早くその日が来ないか……と。
あまりにもな嬉しさでニヤニヤしていると、ジョガーパンツのポッケのスマホが震えた。
何かの通知かと思い取り出して、起動させると画面に『メッセージ “佐藤”』と表示された。
俺はドキっと鼓動を跳ねさせて、何だろうとドキドキしながら即メッセージを開いた。
業務連絡をする為に、佐藤とは他の社員と一緒に連絡先を交換していたのだ。
佐藤のメッセージには、こう書かれていた。
『今日は本当にありがとうございました。おじやも本当に美味しかったです。それから送って下さってありがとうこざいます。いつも色々と迷惑をかけてしまっていたのに…。今度礼をさせて下さい。では、明日もよろしくお願いします。おやすみなさい。』
律儀にメールでそう送られてくると、更に心が鷲掴みにされて気持ちが溢れ出しそうになる。