甘い魔法にかけられて
ピピピピピピ・・・

いつもと同じ朝
いつものように自転車に跨ると

マンション前で手を振るKYが見えた

急に鼓動が早くなり
顔に血液が集まってくるのが分かる

「柚ちゃ~ん、おはよっどうした?顔赤いけど」

「な、なんでもありません」

おはようの挨拶すら返せず
いつもより強めにペダルを漕いで

早足のKYと距離を置く

・・・子供丸出しの私

わかり易く赤面した自分を誤魔化しながらも

向かいの席から
「柚ちゃ~んこれ」

話しかけられる度

「えっと、これは・・・」
「はい、ここへ・・・」

ちゃんと目を合わせて答える
周りが見てもすぐ分かる変化を見せた

お昼休憩も応接室で携帯ゲームをしながら
KYがお喋りに来るのを待っている

・・・私、変だよね

気持ちを確かめる為に
夜はまた文具店へと自転車を走らせた

「奥さん・・・どう思います?」

「柚ちゃんそれは【恋】だね」

「え・・・?」

自分で認めるより
誰かに客観的にジャッジして欲しかった

「柚ちゃん・・・告白するの?」

「まさか、そんなわけ・・・」

KYが自分のことをどう思っているのか
分からないのに突然告白なんて


「む、無理です」

「告白ってそういうものじゃない?成功するのが分かってる告白なんてつまらないじゃない」

奥さんの答えはもっともらしい

・・・でも

煮え切らないまま
老夫婦に見送られてアパートへ戻った
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