甘い魔法にかけられて
どうしても観たい映画を
普段ならレンタルに出るまで待つのに

勇気を出しておひとり様で出かけた

大好きなアニメの実写化
背景の細かい部分まで観察したくて

二本続けて観てしまった

・・・映画館なんて何年ぶりだろう

新しいことにチャレンジしたせいで
気分が大きくなったのか

・・・牛丼買って帰ろ

アーケード街を歩き
牛丼屋で持ち帰りを購入すると

駅前から自転車を走らせ
アパートへ帰った

スッカリ日が傾いた空

・・・洗濯物取り込まなきゃ

ベランダに出た所で
アパートの前にタクシーが止まった
何気に見下ろした視線の先
開いたドアから降りてきたのはKY

・・・凄いタイミング

浮かれた気分で身を乗り出すと
続いて降りてくる髪の長い女性が目に入った

・・・えっ

ハッとして急いで部屋に入る

別に悪いことをしている訳でもないのに
カーテンを閉めてなるべく窓から離れる

いつもと違う強い動悸は
さながら失恋気分

・・・そうだよね

勝手に壁を作って関わらないようにしたのは自分

そこから浮上したのは
KYとの積み重ねのお陰

こちらが気にしてるほど
相手は眼中に無かったのかもしれない

32歳で課長なんてエリートだ
イケメンだし、背が高いし
フランクだし、人懐っこいし
何より素敵な大人だ

KYのことを色々並べてみても
とても良い答えしか出て来なかった

あんな良い人彼女が居ないはずないよね

「・・・ハァ」

ため息を大量に吐き続け
急に消えた食欲に

牛丼は冷たくなった
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