甘い魔法にかけられて
「ふぇ?」

・・・ほら突然真っ向勝負で攻めるから変な声が出たじゃん

ベッドサイドのランプの灯りしか点いていない中
まるで肝試しをしているような
天井へ伸びる影が怖くて

ベッドから降りるとKYを避けるように
壁のスイッチを押した

パチっと明るくなる寝室に
パジャマ姿の二人が居るのも居たたまれなくて

「お茶いれますね」

リビングへと誘い出した

小さなテーブルを挟んで向き合う

湯呑みを両手で持つKYの長い指を見ているだけで
胸がドキドキし始める

「僕としてはね、結構柚ちゃんと仲良くなってきたつもりだった・・・でも、そう思っていたのは僕だけで一人よがりだったのかもって、そう思い始めたらなんかさ・・・」

ボサボサの髪をかきあげながら
ポツリ、ポツリと吐き出すKY

「・・・わ、私も・・始めより話せるようになったと思ってました」

「そう?・・・じゃあなんで?」

・・・そこが一番言いにくいんですが

そうも言えない自分がもどかしい


・・・言うまで帰らないらしいし

ジッと正面から見つめる視線に
顔を上げられなくて

正座した太ももに視線を落とす

「ほら、言ってみて」

いい感じに眠くなっていたから
朝まで催促され続けるのは避けたい

意を決して
モヤモヤの原因を吐き出した
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