甘い魔法にかけられて
ツンとする消毒液の匂いが鼻につき
ボンヤリ目を覚ますと

「あ、柚ちゃん」

「え?お義母さん‥ここは?」

「病院、柚ちゃん倒れちゃったのよ」

お義母さんはナースコールを押しながら
倒れた後動かないことに驚いて
救急車を呼んだと話した

「ごめんなさい」

「良いのよ、体調悪かったのに
電車に乗ったから
余計にダメになったのね
無理しちゃダメよ」

頭を撫でられると
なんだかホッとした

そして・・・

カツカツと近付く靴音が止まると同時に
スライドドアが開いた

「柚!」

飛び込んできたのは
ヨレヨレのワイシャツに汗だくの航平さん

「航平!声が大きい!」

お義母さんがピシャリと叱ると
肩を竦めながらベッドサイドへ来た

「お袋から連絡貰ってさ‥」

研修を抜け出して来たらしい

「ごめんなさい」

「いや、柚が謝ることじゃないよ」

頭を撫でる大きな手に
何故だか涙が溢れた

それを指で拭う航平さん

「それで何が原因?」

「それが・・・」

よく分からないと言おうとして
タイミングよく入ってきた看護師さんに視線を動かす

「矢野さん、動けそう?
車椅子持って来たから
診てもらいましょう」



< 89 / 90 >

この作品をシェア

pagetop