土方歳三の熱情
chapter13
土方さんの家のいつもの部屋。

二人きりで向かい合うと、
土方さんはいつになく真剣な表情で言う。

「どちらにするんだ?」

土方さんの家に通ったこの数日の間、
土方さんは私の体に指一本触れることはなかった。

私に対しては本当に優しくワレモノを扱うように接してくれる。

そしてこの数日の間に分かったことがもう一つある。

それは新撰組の屯所にいる土方さんと
自宅にいる時の土方さんがまるで別人だということだ。

土方さんは新撰組の屯所ではいつも気を張っている。

ありとあらゆる場所ですべての隊士の動向を常に気にかけている。

規律が緩まないように、
緊張感が失われないように、
隊士達の恐怖の対象としての鬼の副長を演じているし
必要に迫られれば実際に鬼として容赦ない処置を下すこともある。

鬼の副長でいるために土方さんは
もともと仲の良かった古株の幹部達との間にさえ距離を置くようにしているみたいだ。

でも家に居るときの土方さんは本来の土方歳三に戻る。
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